7年の沈黙を破って

Tokyo Crossover/Jazz Festival略してTCJF(ティー・シー・ジェイ・エフ)が復活します。

2020年初頭にも某レコード会社と組んで開催を目論んでいたのですが、コロナの流行で話は断ち消えに・・・。

2020年後半には2021年に東京(日本)と高雄(台湾)の共催案が浮上するもののこれも2022年に延期・・・。

ターニング・ポイントは、2021年5月29日の代官山UNITで行われたDJ KAWASAKIのアルバム・リリース・パーティーでした。

あのイベントを僕は、TCJF presentsと題し、密かに復活を予感させる狼煙を上げます。

そして、イベント中に、僕は確信したのです。ミュージシャンもオーディエンスも求めていたのはこれなんだ!と。

コロナ禍で動画配信という新しいフォーマットでのDJやライブの視聴の可能性は広がりました。

ただ、目の前で人が演奏しているのを目撃し、全身で音を浴びる快感は何物にも代えられない!と再認識したのです。

音楽を爆音で聴いて踊ることの喜び。

ソーシャル・ディスタンス・ルールで距離はあったものの見渡せば、同じ音楽を愛好する仲間達の姿が自分を囲んでいる。

僕たちは決して一人じゃない。

音楽は不要不急??いや、音楽は至急必要だ!!とさえ僕は強く思ったのです。

だらだらと続く緊急事態宣言を脱し、すぐにでもこの状態に戻さないとライブ・ハウスもナイト・クラブも人の心も死んでしまう!!と僕の本音が脳裏に鳴り響きました。

その日から、僕は静かに、そして、慎重に動き始めたのです。

非常事態宣言が解除されないままだけれど、音楽関係者の雇用を守るにはどうすればということも考えました。
国のガイドラインを遵守し、感染症対策を十分に講じて、イベントを開催する・・・。

そして、3ヶ月後の事態の好転を祈ってTCJFを復活させるという決断に踏み切りました。

勿論、変異株による感染拡大で余談を許さない状況であることは理解しています。

最悪のケース(中止)を考えつつ、今、動き出さないと開催可能な場合に告知や様々な手配に手遅れになります。
今、動き出さないと、多分、今年は何も起こらないでしょう。

しかも、来年1月末に閉店を発表したageHaで、年内の週末で会場と僕の予定が合うのは11月20日のみ。
TCJF最高の集客を記録したageHaであの興奮をもう一度!と夢見るのは僕だけではない筈。

もう、TCJFをageHaでは出来なくなるのですから・・・。

この7年で音楽シーンは大きく変わりました。

もしTCJFが存続していたなら出演オファーをかけていただろうアーティスト達が急成長を遂げ、大型フェスに出演するようになったのです。

Kamasi Washington , The Internet , Tom Misch , Hiatus Kaiyote

The Roomに遊びに来てくれていたアーティスト達がグラミー賞を受賞しました。

Thundercat , MonoNeon , Cory Henry(コーリーは受賞してから遊びに来てくれたタイプだけれど)

彼らの楽曲を僕は自分の番組"JAZZ ain't Jazz"でずっとサポートして来ました。

番組内の名物企画、"架空の夏フェス"という回の放送に彼らを起用?したこともあるのです。

そのJAZZ ain't JAZZも7年前に始まり、去年終わってしまいましたけれど・・・。

この7年でロンドンの若いミュージシャンが注目されるようにもなりました。

Kamaal WilliamsにもJoe Armon-JonesにもAshley Henryにも会いました。
Nubya GarciaやMoses Boydのライブも観ました。
Shabaka HutchingsはThe Roomにも遊びに来てくれました。

どう考えても僕の目に狂いはなかったし、今こそジャズとクロスオーバー・ミュージックの祭典を再び立ち上げる時期であることは間違いないと思います。

但し、そこには招聘の壁が立ちはだかります。今の日本に外国勢を呼ぶのは困難・・・。

この夏、NYで、ロンドンで、そしてクロアチアで行われた僕の知人や友人が参加するフェスの告知を見て僕はうなだれました。

そして、色々な意味で取り残された気持ちになりました。

海外ではもう旬のアーティストから大御所までが勢揃いしているのです。

そこで僕は考えました。

それらのフェスに呼ばれてもおかしくない日本人アクトを集めれば世界が観たいと思えるフェスになるんじゃないかなと。

招聘できないハンデを逆手に取って世界が羨むようなライン・アップを組めばいいんだと!

和ジャズのレジェンドから、僕の海外の友人達が熱望する日本人DJまでを網羅。

第一回目から世界基準を謳って来たTCJFだからこそ、復活する今年は国内勢でそれをクリアしてみせる!という結論に至りました。

勿論、この僕の野望はブッキングとしては実現すると思います。
そして、開催に向けて走り出しますが、当日まで乗り越えないといけないハードルはいくつもある事でしょう。

繰り返しになりますが、行政から該当するイベントの中止要請が出た場合は、TCJFを中止します。
会場が使えなくなった場合も中止する予定です。
又、開催するにあたっては、最新の各種ガイドラインを遵守し、感染防止対策を徹底します。

中止のリスクを視野に入れながらもとにかく今は開催を目指して動きます。

感染拡大の沈静化を祈るだけでなく関係各位への働きかけ、また関係者やファンへの呼びかけも必要となるでしょう。

音楽を止めない、そして、人間らしい生活を守る為にも実行委員会と開催に向けて様々な努力に取り組みます。

新木場ageHaでみなさんにお会い出来ることを楽しみにしています。

2021年8月20日
Tokyo Crossover/Jazz Festival 発起人
沖野修也